家族イベントの節目で撮られた写真を収めるアルバム。家族の歴史をつづる大切なツールです。
でも、アルバムの意義とは「いつか過去を見返す」ためだけのものなのでしょうか?
記録に納めた写真をアルバムの中に納めていく、その行動そのものに家族内の愛情を育むための重要な意味があるのではないか?
そんな疑問から、フォトアルバムを作ることによって子どもへの愛情が深まっていくのか、その効果を科学的に検証しました。
そして、その実験の結果「アルバムをつくると、その子どもに対して愛着が形成される」ということが明らかとなりました。
このページでは、その研究方法や詳しい結果についてご紹介します。
大阪教育大学紀要論文(小崎 恭弘、城戸 楓)平成30年7月31日紀要受付 より抜粋
アルバムづくりは感覚的には良い印象がありますが、これまでその効果を示す科学的な根拠はありませんでした。
この実験では、「アルバムをつくることで、その子どもに愛着が沸くのか」ということテーマに、心理学で確立されている「IAT」という実験を用いて検証をしました。
Implicit Association Test(潜在的連合テスト)。 科学的心理学の心理テストの一つで、人が潜在的(無意識)にその対象に対してどのような印象を持っているのかを測定します。
被験者は大阪教育大学の学生42名です。
実験は、被験者にアルバムづくりを体験させる「学習フェイズ」と、学習後に心理テストでその効果を計測する「テストフェイズ」で構成されています。
学習フェイズでは、被験者を「アナログアルバム」、「デジタルアルバム」、「写真を記憶する」の3つの行動グループに分けて、それぞれ実際に体験をさせます。
ここで使用される写真は、この時、被験者が初めて見る子どもの写真です。
出力された写真とアルバムを使って、フォトアルバムをつくるグループです。
アルバムにはコメントカードやシールを使い、コラージュもします。
iPadを利用し、アルバム作成アプリ上でアルバムをつくるグループです。
アプリのデザイン機能を使って、コラージュもします。
子どもの写真を記憶するグループです。
パソコン上に表示される子どもを覚え、記憶テストも受けます。
テストフェイズでは、各学習を体験した全ての被験者が実験(心理テスト)を受けます。
<テスト方法>
テストは、環境が整えられた部屋で、専用のパソコンを用いて行われます。
この実験では、先に表示された対象物に対し愛着が強いほどポジティブ語には早く、ネガティブ語には遅く反応することが心理学上で明らかになっています。
この実験の結果、3つの行動の内、アナログアルバムをつくったグループだけでポジティブ語の反応差が明確に生じました。
アナログアルバムグループのポジティブ語に対する反応は、学習フェイズで見た子どもの方が0.1683秒早く、明確に愛着が形成されているという結果になりました。
比較してデジタルアルバムは0.0457秒 、画像の記憶のみは0.0332秒 と大きな差は認められませんでした。
また、ネガティブ語については、どのグループにおいても大きな変化はありませんでした。
このことから、アナログアルバムをつくるとその子どもに対して愛着が生まれたということが言えます。
これまでの研究からも、写真を取り巻く環境はデジタルが主流となっています。
その中で、PCやスマートフォン等の端末で写真を見る・デジタル上でまとめる・自動で整理されたアルバムを見るという、今や当たり前の行動に対して
「ただ、写真を見ているだけでは子どもに対する愛着は形成されず、アルバムをつくることで愛着が形成される」という
学術的な効果の実証が得られたことは、今後、子育てにおけるアルバムに対する考え方を見直していただく機会に繋がると期待しています。
また、今回の実験によって、「アルバムづくりが持つ効果」の実証に成功したことで、今後、更なる実験の可能性も見えてきました。
例えば、被験者の立場や写真の内容によって効果は違うのか、またアルバムづくりのどの行動によって愛着が形成されたのか等、それらをより深い観点で探ることで、
これまで以上にアルバムが子育てや家族の愛情を育むものとして活用いただけるものと考えています。
"今の「アルバム」を知る"をコンセプトに、学術的な研究やアンケートなどを中心に発信を行うWebメディアです。
アルバムづくりをする意味や効果を解明することで、アルバムづくりのサポートに繋げていきます。
ナカバヤシ株式会社